あらゆる扉を開ける猫、稲造
去年から稲造を迎え入れて生活している。
家に迎えたときは1歳半くらいだったが、前の飼い主の教育で大変ひとなつっこく、最初からほとんど苦労がなかった。
稲造は器用らしいと聞いていたが、家にも慣れてくるとだんだんと能力を発揮し始めた。
例えばドアノブ。
前の家で学んでいたのでうちに来た日から開けていた。
ドアノブが回せるくらいだからふすまは余裕で開けてしまう。ちゅーる(大好きなおやつ)を出す時に一旦閉じ込めておくが察してすかさず開けて出てくる。
写真がないが、自動給餌器も攻略された。
本体を揺らして振動で出してしまうので固定したが、しばらくすると出口に手を突っ込んで掻き出すようになった。
どうせなら才能を伸ばしたい
いたちごっこになってしまい困っているが、向学意欲が旺盛なのはいいことだ。褒めたい。
がんばって攻略するとカリカリが出てくるような装置を作れないだろうか。
いくつかアイデアを考えたが、3Dプリンターで作るのであまり大きいものは作れない(それに邪魔だ)。
難しすぎるとかわいそうなので、ハンドルを回すだけで出るようにしてみよう。
シンプルだが、稲造はこの課題を解決できるだろうか。
まずは、ハンドルを回してやって出して教える。
最初は出してくれるものだと思って待っているようだったが、待っていると試行錯誤し始めた。
ハンドルを見れば回すものだと思って作ったが、猫にアフォーダンス理論は通用しない。
噛んだり揺すったり爪をかけたり、とりあえずランダムに行動しているような感じだった。もうちょっとドアノブみたいな形だったら良かったんだろうか。
最初は時々手伝ってやりつつ1回目は50分程度で完食した。いつも飲むように食べているのでこれはこれで胃に良さそうだ。
それから毎晩のご飯はからくりフィーダーの出番となった。
ご飯が出てくるとわかると、得体のしれない装置もすぐに慣れて飛びついてくるようになった。
トレーニングの成果
約3ヶ月、ほぼ毎日トレーニングしたらだいぶスムーズに回せるようになった。
最近はほとんど手伝わなくても10分くらいで完食できるようになった。やるな。
毎日見ていると上達していくのがわかって面白かった。
次の課題として、出口に透明なパイプが付いていて、コロコロと中を転がっていって遠くから出てくるという装置を作ってみたいと思う。
今は出してすぐに食べてしまうが、それだと何十回も往復することになるので、全部出しきってから食べに行くということを覚えるかもしれない。「マテ」をやらないと言われている猫が自ら習得する瞬間である。
高田徹 (文章、写真、設計、制作、えさやり)
稲造(出演)