イヤホンを絡ませるマシーンを巨大化した

無駄づくりを行う藤原麻里菜さんの作品、「イヤホンを絡ませるマシーン」をImage Clubの高田徹(鉄塔さん)が巨大化しました。今回は藤原さんに記事を寄稿していただきました。

イヤホンを絡ませるマシーンを巨大化したいという思いがここ数年ある。私は、無駄づくりといって、無駄なものを作る活動をしているのだが、その活動の中で作った「イヤホンを絡ませるマシーン」は特に気に入っているものだ。ボールの中に絡まっていないイヤホンを入れ、ボタンを押すとモーターが左右に回り、モーターが止まる頃にはイヤホンが絡まっているというマシーンだ。人類はイヤホンを絡ませない方に知恵を使ってきたが、私はその逆を考えることで、人類史に残る新しい発見が生まれるのではないかと思い、このマシーンを作った。嘘だ。本当は、みんなに嫌がらせしたくて作った。

巨大なギアを作りたい人と利害が一致する

このマシーンを巨大化するために、自分でいろいろと調べたり、設計をしてみたが、安全性だったり、コストだったりを考えるとなかなか実現に向かうことができなかった。しかし、マイラボ渋谷という場所から「展示をやらないか」と言われ、巨大イヤホン絡ませマシーンを作れるチャンスを得ることができた。ただ、前途した通り、私の設計では安全性に問題がある。なので、機械工学が得意な人に製作を頼むことにした。それが、このImage Clubのメンバーである鉄塔さんだ。

鉄塔さんは、なんかすごい。鉄塔さんの技術力はImage Clubの鉄塔さんが書いた記事を読んでくれたらいいとして、彼がいつも持ち運んでいる鞄はアタッシュケースみたいなもので、中を開けると持ち物の形に切り取られたスポンジが入っており、その中に持ち運ぶものを整頓して入れている。こんな映画の主人公みたいな人がいるんだと感動したのを覚えている。多分、次のガリレオの主人公は福山雅治じゃなくて鉄塔さんだと思う。

私は鉄塔さんに自分が作ったイヤホン絡ませマシーンの動画を見せた。すると、「なるほど。分かりました」と言って、しばらく経つとCADソフトで設計した巨大イヤホン絡ませマシーンの設計図が送られてきた。無骨なデザインが、いかにも鉄塔さんっぽくて私は好きだ。

設計図

仕組みとしてはモーターによってギヤが回り、球体の周りに着いた巨大なギヤがそれに応じて回るというもので、「でっかいギヤを作ってみたかったんです」と鉄塔さんは言っていた。私が巨大なイヤホン絡ませマシーンを作りたいのと同じように、鉄塔さんはでっかいギヤを作りたかった。利害が一致した瞬間である。

デモ用の小さい絡ませマシーン

巨大イヤホン絡ませマシーン、イヤホンが絡まらず

鉄塔さんが3Dプリンターでギヤの部分を出力してくれて、アルミフレームや球体の設計や発注も行ってくれ、すごくスムーズにマシーンができあがった。私がスムーズだと感じているだけで、鉄塔さんは試行錯誤していたに違いないが、それを感じさせなかった。Arduinoにプログラムを書き込んで、動かす。イヤホンを入れてみると、あまり絡まない。

完成間近

鉄塔さんの案で、薄いスポンジテープを球体の中に貼り付け、そこに突起をくっつけることにした。これにより、イヤホンがこの突起に引っかかり、上まで行ったところで下に落ち、打ち付けられる。これを正回転と逆回転を繰り返すことで、イヤホンが絡まるのではないかという試算だ。

黄色いのが突起

この仮説は正しく、イヤホンをマシーンに入れ、スイッチを押すと、みごとに絡まったイヤホンができあがった。なんというか、西部劇によくでてくる風に吹き飛ばされている藁みたいな植物の原理だ。あっちこっちにイヤホンを飛ばすことで、ちょうどよく絡ませることができるのだ。私たちはまた新しい知識を得ることができた。

完成したイヤホン絡ませマシーン

イヤホンが絡まり、人々が笑顔になる

こうして、巨大イヤホン絡ませマシーンがこの世に誕生した。黄色のフィラメントがすごく映える。展示会場に置いていると、「なぜこんなに巨大なんですか?」と言われるのだが、意味がない。私の空想の中で、巨大なイヤホンを絡ませるマシーンが生まれたからに他ならない。

巨大イヤホン絡ませマシーン

展示会場では、たくさんの人がマシーンをつかってイヤホンを絡ませ、それをほどくという作業を行っている。感想を聞くと、「ほどけたときに快感がある」とか「さわやかな気持ちになる」と言う声が多い。何人かで来て、笑いながらほどいている人たちもいる。イヤホンが絡まるということがこんなにもエンターテインメントになるとは、作る前は思いもしなかったことだ。

「想像というのは知識よりも重要だ」というのはアインシュタインの言葉で、知識は今あることを理解するだけだが、想像はこれから起こることを包括する。巨大なイヤホン絡ませマシーンを作るだなんて、無駄でしかないことも、いざ手を動かして形にすることで、私たちは新しい価値を創造することができるのだ。

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ご来場のみなさんには社員としてタイムカードを切ってお仕事体験をしていただきます。巨大イヤホン絡ませマシーンもこちらで体験できます。

株式会社無駄 渋谷支展 – 無駄なおしごと体験 –

8月8日(月)-9月11日(日)
マイラボ渋谷(渋谷センター街内)
入場無料

https://mylab-shibuya.jp/events/muda/

制作 藤原麻里菜
技術協力 高田徹